SHCスポーツビジネスマスターコースOBOGインタビューVol.8_長谷川乃亜氏/株式会社モルテン

業界の最前線で活躍しているOBOGに、「コースでの学び」や「未来の受講生に一言メッセージ」などを聞き、本コースの魅力を発信していきます。

 

8人目は、SHC15期OBであり、「株式会社モルテン」のブランドマーケティンググループのグループリーダーを務める長谷川乃亜さん。

 

長谷川さんは、幼少からサッカーを始め、高校時はJリーグ下部組織に所属。大学在学中にサッカーを続けることを夢にメキシコ、ドイツでプレー。その後、日本・英国・米国での10年以上のマーケティング、ブランドマネジメントの経験を経て、2021年より株式会社モルテン入社。ブランドマーケティンググループのグループリーダーとして、グローバルで競技団体と協業した活動や商品のプロモーション、ブランドコミュニケーションなどの戦略や企画立案、実行を担当されています。

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Q 現在の仕事内容について、教えてください。

大きく2つあって、1つは、「モルテンブランドとは」という、ブランド全体をみる仕事。例えば、ブランドのファネル(「認知」「興味・関心」「比較・検討」「購入」「ロイヤル」)とNet Promoter Score=顧客ロイヤルティ(企業やブランドに対する愛着・信頼の度合い)を数値化する指標を用いて、グローバルにブランドの価値測定を行い、国内、海外のマーケティング・営業チームとの議論を通じて施策に落とし込む業務。もう一つは、モルテンが据える4つの主要競技、バスケットボール・フットボール・ハンドボール・バレーボールにおける国内外のプロモーションの企画立案、実施や、ソーシャルメディアを含むデジタルでのコミュニケーションを担っています。

 

ブランド全体の戦略立案という全体俯瞰の業務から、ブランドコミュニケーションの細部にいたる部分までをグローバルに担うグループの責任者をしています。

 

具体例を挙げると、オーストラリア・シドニーで開催された「FIBA女子バスケットボールワールドカップ2022」にてFIBA(国際バスケットボール連盟)と協働し立ち上げた「女性のロ―カルチャンピオンプログラム」がある。

この活動は、女性コーチや審判、運営者など、バスケットボールをさまざまな形で支え、コミュニティに貢献している方々を開催国であるオーストラリア全土で募り、その実績を紹介するというもので、チャンピオン(優秀者)として選ばれた幸運な3名には、FIBA女子バスケットボールワールドカップが行われているシドニーへ向かい、ワールドカップの舞台裏を体験してもらうだけでなく、FIBA殿堂入りメンバーの一人で女子バスケットボール元オーストラリア代表のミシェル・ティムズ氏と対面する機会を設けるほか、第一線で活躍するコーチや運営者らの指導を受けることができるなど、将来につながるネットワーキングの機会を提供。実際、私自身がFIBAへ、モルテンとしての課題認識から具体的な活動までをゼロから立案、プレゼンテーションを実施し賛同を取り付けた。結果FIBAから全面的な支援を得ている。

その参加者の1人がプログラム後、WNBL(オーストラリアの女子プロバスケットボールリーグ)のコメンテーターに就任する実績となり、エンパワーメントによって将来をポジティブなものに、その為の大きな力が生まれるのだと感動し、すごく良い経験になった。

FIBAはメインパートナーの1つであるため、パートナーとしての活動量を増やし、結びつきを強固にすることにビジネスメリットがある。また、モルテンとして社会課題に対して、「本気」で向き合っていることを示せる事例となった。

 

モルテンのブランドコミュニケーションである、社会課題に対するスポーツの価値を届けるためのプロジェクト、ブランドは現時点では以下の4つ。

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①「Keep Playingプロジェクト」:https://shop.moltensports.jp/blogs/molten/20230213_01

日本における女性スポーツの競技登録者数は高校を卒業後、大きく減少してしまいます。どんな競技レベルやライフステージでも、スポーツの持つ魅力に惹きつけられ、仲間と出会い、プレイを楽しみ、続けて欲しいと考えています。このメッセージが多くのスポーツをする人・みる人・支える人に届くことで、興味・関心につなげ、スポーツを継続する環境がより良いものになることに繋がっていくことを目指しています。

 

②「My football kit」:https://myfootballkit.jp/

すべての子供たちの成長のきっかけに貢献します。企業や団体が、多くの子供たちへ組み立て式サッカーボールを贈ることで、SDGsに掲げられた、目標4「質の高い教育をみんなに」と、目標12「つくる責任・つかう責任」に貢献するプログラムです。

 

③「B+(ビー・プラス)」:https://www.molten-b-plus.com/

「もっと強い日本を、バスケがあふれる風景を」をコンセプトに、スポーツ用品事業の新規事業としてスタート。今よりバスケットボールが日常で楽しめるように、練習のサポートをするために、バスケットボール環境を整える事業を行っています。

 

④「一般社団法人 Arch to Hoop 沖縄」:https://arch-to-hoop-okinawa.com/

「NPO法人沖縄青少年自立援助センターちゅらゆい」とともにバスケットボールを通じて子どもの体験格差の解消に取り組む「一般社団法人 Arch to Hoop 沖縄」を設立。

沖縄は、子どもの貧困率が29.9%(全国平均の2倍)と高く、貧困を背景に不登校が増加し、クラスに1人が学校に通えず学びが奪われている状況です。

Arch to Hoopは、スポーツを通じて、非日常な体験や出会いを提供します。具体的には、コートの設営撤去、イベントの企画運営、チラシ制作や会場演出など、全ての子どもと大人が様々な関わり方で、バスケイベントを実施し、「子どもたちがやりたいことを見つけ社会的に自立する」「大人たちが社会課題に向き合い、活動が持続する」「地域のコミュニティが強まり、支援体制が築かれる」ことを目指しています。

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このように、社会事実に貢献できるブランド、プロジェクトを立ち上げて推進することで、ブランド姿勢を示し、ブランドコミュニケーションを実施している。

 

Q 現在の仕事の魅力/やりがいについて、教えてください。

そもそもスポーツで生かされていた人間。(高校時はJリーグ下部組織に所属。大学在学中にサッカーを続けることを夢にメキシコ、ドイツでプレー。)日本・英国・米国での10年以上のマーケティング、ブランドマネジメントの経験をしてきた。英国ブランドのP/Lをあずかる役割だったり、米国では、買収したブランドの立て直しや、スタートアップブランドを立ち上げるメンバーだったり、その地で結果を残すことを求められた結果、個人的にスキルがついた。帰ってきたスポーツ業界でも、自分自身ができることを増やし、貢献していきたい気持ちが強い。

やりがいとしては、自分やチームと共に行った施策に対する反応が見えることがやりがい。

前述の「女性のロ―カルチャンピオンプログラム」参加者からは、プログラムが人生で最高の日になったと言われた。自分の好きなことで人に良い影響を与え、貢献できることが嬉しい。

 

また原体験として、メキシコでサッカーをプレーしていたときに、突如クビを宣告された当時、ピッチ脇で帰り支度をしていたところ、チームメイトがきて、自分のユニフォームと私のミサンガ(ユニフォームより高価ではないもの)を交換してくれと言ってきた。

そのときに感じたのは、商品の価値よりも時間を共有することがすごく大事だということ。

当時の経験より、「モノの価値よりも人と人との気持ちの揺れを共有する機会を増やしたい」と考え、それをいかに大きくするかという視点で「食品」「一般消費財」の業界を選んだ。

 

しかし、転職した現在、より実施したことに対する跳ね返り・反応は「スポーツの現場」で感じることが強く、そこに仕事の魅力を感じている。

 

 

Q なぜ『SHCスポーツビジネスマスターコース』を受講されましたか?

私自身転職してきたので、スポーツ業界のネットワークが非常に少なかった。そして私の部署であるブランドマーケティンググループは、もっと外に出ることでより良い提案ができると感じていたのでまずは自分が出ようと。モルテンの強みは、企画、実行、検証において社員が考え、自らが進めていくこと。そこにコンサルとエージェンシーが入らないことが大きな魅力だと感じている。つまり、企画における質を上げていくには、ネットワークの量の質を上げてインプットを増やすことが大事だと考えた。

 

もう一つの理由は、アメリカで仕事をしていたときに通っていたビジネススクールで学んだ知識と、スポーツ業界の構造は違うのだろうと考えていて、この業界にいるのであれば、その分野を学び続けないといけないと思っていたところ、上司から「SHC」の存在を聞き、受講した。

 

Q 『SHCスポーツビジネスマスターコース』での学びは何ですか?

学びのメインであったスポーツ組織の収益構造と、前職の収益構造が全く違うのが新鮮であった。

例えば、コンサル出身者やスポーツクラブの元社長や会長など、多種多様なキャリアを持つ人たちの視点は、とても刺激的で大変勉強になった。

同時に、自分自身のキャリアがあまり多い存在でないということも自己認識することができ、今後活かすべきポジショニング・強みを客観視できたことも大きな学びとなった。

 

Q 『SHCスポーツビジネスマスターコース』で最も印象に残っている講義はどの講義ですか?

本間さんの「キャリアを考える」という講義でのエドガー・H・シャインの理論を用いて、「自分たちのキャリアをどう考えるか」というワーク。

この年齢で他の業種の人と本気で「キャリア」について議論することは貴重な経験で、野心をもった人たちの愛のある指摘を受けられたのは深く印象に残っている。

 

Q 「株式会社モルテン」は、SHCの賛助会員企業になっていただいています。

会員企業からの参加でしたが、どのようにSHCを役立てていきたいと思いますか?

参加費は、モルテンが賛助会員企業であり会社からの支援があった。(賛助会員企業からの参加は、参加費半額。)

私自身はモルテンから初めての参加者であったので、今後私に続いて、「中途入社」の社員に受講してもらいたいと考えている。(現在、長谷川さんのチームはキャリア採用を募集中)

SHCでのネットワークは、他業種からスポーツ業界にきた社員にとって、刺激的で有用だと考えている。また、俯瞰する立場、経営層などの管理職の受講も役立つと思う。

 

モルテンはメーカーなので、SHCの学びのメインである「クラブ経営」は通常業務に直結しないが、視野を広げるような経験になる。スポーツビジネスの本質を学ぶということだけでなく、ビジネスの本質を理解している人が、スポーツビジネスとの比較を感じ、多様なバッググラウンドの同期との議論の中で、自分の立ち位置・強みがスポーツビジネスに役立つことを実感してもらうことができるのではと思う。

 

Q 今後成し遂げたい、ご自身の目標は何ですか?

個人的には、海外での経験をもっと積みたいと考えている。そう考える理由として、野々村チェアマンの講義に出てきた「ドリームジョブ」の話がある。日本のスポーツビジネスは、まだまだ「ドリームジョブ」ではなく、その実現のために、自分が何をできるか。極論死ぬときに、スポーツがドリームジョブになることに少しでも貢献できた実感が欲しい。

 

その為に、自分自身向上しなければいけないと考えているし、自身が貢献できる分野として考えている、「マーケティング」分野で国内外問わずどんどん外に出て成果を出していきたい。それを日本のスポーツビジネスに少しでも還元していけることが目標。

 

Q これからの『SHCスポーツビジネスマスターコース』受講生に一言メッセージをお願いします。/こういう魅力がある・こういう人にオススメなど

既にスポーツ業界にいる人、これから目指す方へのメッセージとして、「SHCは現在持っているスキル・姿勢を100%試せる場」といえると思います。力を出したら出した分だけの沢山のフィードバックと気づきがもらえる環境があり、新しいチャンスも巡ってくる場所だと思っています。

 

私自身もSHCを受講していなければ、スポーツ庁JSPINの派遣に応募し、行かせていただけなかったと思うし(SHC受講生へのメールリストで本派遣募集案内がまわってきた)、その後の派遣報告会を通じて、さらに広がったネットワークや、新たなチャレンジの機会を得ることは出来なかった。

SHCを受講されるのであれば、ぜひ、置きにいかずに全力で取り組んでほしいと思う。